廊下の大きな窓の向こうの雨の轟音に混じり、他に誰もいないエントランスには二人の声が響いた。 「返事、聞かして?」 「・・・・・・え?」 おそらく察しはついている苅谷は確かめるように聞き返した。 「俺、本気なんだよ」 つきのびた水町の長い手が苅谷の頬をかすめ、苅谷ごしに壁へと届く。 水町の顔はいたって真面目。二人の顔は悔しいくらい近い。