上級層の多いこの街に最下層であるダートの彼がいるには辛すぎる。

 両親を早くに亡くした彼は上級層のおこぼれをもらって生きていた。

 食べ物には困らないがダートである事は屈辱を受ける以外に何も無い。

 そんな街外れで見つけた珠……美しく色を変えるその珠に少年は魅入られて家に持ち帰った。

 家といってもただ捨ててあった板を囲っただけの貧相なもので見ようと思わなくても中が見えてしまうほどの造り。

 どうやってこの球を売りさばこうか考えながら寝床について朝──目覚めると……

「2つになってたってぇ!?」

 ここまで話を聞いていたディランが素(す)っ頓狂(とんきょう)な声を上げる。

「初めの球はどれくらいの大きさじゃった?」

「えと……」

 エイルクは考えながら手を動かす。

 思い起こした大きさと一致した時、止まった手にナナンはあごに手をあて溜息を漏らした。

「ふむ……まとまるにはまとまったがいささか大きかったのかもしれん。自然と分裂してしまったのじゃろう」

「で、2つあってもう1つはどうした」

 白銀が静かに問いかけるとエイルクは頭をポリポリとかいた。

「それがさ……」