「楽しい話……してない」
「してほしいの?」
あんまり楽しい話、してない。
いつも私が怒るばっかりだから。
「してほしい」
「俺さ、瑞葵みたいな女の子初めて」
「…なんで?」
「俺の顔見たら、シケ顔だっし興味なさそうだし」
「うん」
「だから初めて!!」
私が世間を知らなさすぎて、渚のかっこよさなんか知らなかった。
完璧だと思うよ、今さらだけど。
「……しかも見たことないほど」
「…何?」
「いや、いいわ」
「……渚も初めて」
首を傾げ、私を見る。
「聞きたいその話」
「だって渚…本気で質問で興味持ってくれた」
答えを出してくれるならいつでも私は待つ。
もう少しだけ君といたいから。
「俺は本当にあの質問には驚いた」
「……うん、どして?」
「そんな学校で有名な人がこんな質問してくるとは思わなかったから。」
有名……どんな感じで?
おかしいとか…そんなので有名なんていやだ。
「有名なのは…顔とか?」
「……そうか」
「瑞葵…無意識に仕草とかいいんだよ」
なんの口説き…?
君からほしい言葉はたった二文字だと思う。
でも私も伝える必要もあるけどまだ早い。
長期戦……だ。
「渚……なんか食べたい」
「いきなり?」
「昨日…何も食べてない」
…あっ昔買ったオルゴール。
「俺、この曲知ってる」
何て…知ってる?
なわけがない、だってあのオルゴールは……。
こんな悲しい曲のオルゴールなんか誰も知らない。
売られているのか、売ってないのかわからない隅っこに置かれたオルゴールなのに……。
なんで渚……知ってるの。
「俺誰かに、このオルゴールを見せて……あれ」
「……ん?」
「あー思い出せない」
「……そうか」
食べものを買いにきたはずの…きた場所はオルゴール屋。
「私も知ってる…持ってる」
「瑞葵の人生を象徴してるよこの曲」
過去に亜梨架に裏切られ、世界が嫌いになって……。
この曲はあの時にとって辛いときを一瞬忘れられた音だった。
「……渚」
「どうした?」
「渚が私の過去に…関わるのなんかいやだ」
あの時関わったら奴ら…好きになれない。
渚だとしても、もう嫌いになるかもしれない。
誰かがネジを回したため、悲しみのオルゴールが私たちを包みこむ。
「俺はお前の味方だ…」
何だ…聞いたことのあるセリフ……。
あれ…わからない。
前も言ったからだ……。
きっとそう……。
過去なんて関係ない。
よく私に掻けてくれる語意の1つじゃないか。
「…この曲、好きなのとっても」
「ずっと見てたよな」
「綺麗な曲だから……」
あの秘密の部屋に置いてあるけど…。
取ってこれない……。
「瑞葵のもまた見せてよ」
「うん」
「さて行くか、俺の家」
あ…黒だ、落ち着く。
渚の部屋は黒…ばっかではないか。
「落ち着く?」
「……は?」
「口に出して言ってたから。」
本当に落ち着くから。
渚の部屋だからかも知れないけれど。
「さっきの続き、話そうよ」
「いいよ」
私にホットミルクが渡された…。
別に好きじゃないのに。
「オルゴール…ね」
ぐるぐる部屋を行き来してる。
オルゴールあるの?
タンスからだしたホコリまみれのオルゴール。
「あった…」
「持ってる人がいるなんて」
「偶然、それとも必然?」
「…知らないから」
「冷たいな…毎回」
その後、渚はオルゴールを見て…
「瑞葵、悪かった…」
「何のこと…?」
「謝らないといけない気がしたから」
渚は……そんなことしないって信じてる。
「渚は…少しは信じてるから。」
「何それもう一回言って?聞いたことない言葉だから」
「……言わない」
クスっと笑われた後、強く抱き締められた。
「言ってくれないと、はなさない…」
「少しは信じてる」
「ありがと、俺は味方だ…だけど」
「だけど?」
「なんでもない…」
気になる…でも突っ込むのは良くない…。
渚は好きな人いるって言ってたけど行かなくていいのだろうか。
最近その話が出ないから、気になる。
「好きな人とは、どうなった?」