「髪に付いたのは綺麗に取れないから、家に帰ったらちゃんと洗ってね」


「はい」


「じゃあ、消毒するわね。ちょっと染みるかもしれないけど、我慢してね」


看護師は消毒液に浸けてあった脱脂綿をピンセットで摘(ツマ)んで、あたしの左側の口元にそっと当てた。


「……っ!」


その瞬間、僅かに走った痛みに、思わず顔を歪めてしまう。


脱脂綿が傷口に触れる度に眉に力が入って、つい顔をしかめた。


看護師は手際良く手当てをしながら、小さな笑みを浮かべた。