(ま、お袋を信用しなよ)

 出掛けに覗いた鏡の中で隼人くんが呟く。
 隼人くんもドコに連れて行かれるか想像できない模様。
 というか他人事で、マトモに考えてくれていない様子。
 うー、そんな反応されるともっと不安になるじゃないか。

「さ、早く乗って」

 急かされながらお母さんの運転する車に乗り込む。
 助手席で無言のまま車は目的地へ向かう。

「ねえ? さっきも聞いたけど……隼人とは全然面識は無かったのよね?」

 ふいにお母さんが質問してくる。

「え? ハイ、全く知らないんですよね」

 だからこその苦労も多々あったわけで。
 いや、知り合いと入れ替わっても苦労はするでしょうけど。

「そっか……よっぽど波長があったのねえ」

 ハチョウ?
 んー、このお母さんの考えてることは全く読めない。
 なんだかこの事態が起こった理由も分かっていそうなんだけど。
 聞いてみようにも話題のとっかかりが見当たらない。

――とりあえず……お母さんに頼ってみるしかできることが無いのが現状だよね。