(ここは『あの世』ではありませんよ)

 その言葉を受け、隼人くんのお祖父ちゃんの説明を待つ。

(ここはね、言うなれば『記憶の底』なんです)
(『記憶の……底』ですか?)

 そう教えられながらも私は少し不思議に思った。
 この場所が記憶の底というならば……どうして私と隼人くんのお祖父ちゃんが会話できてるのだろう?

 私のそんな考えを見透かしたように隼人くんのお祖父ちゃんは説明を続ける。

(そう、そして私たちは『魂の欠片』なんです)

 うーん、何だか分かるような分からないような……。
 つまり、場所は記憶の底で、現在の私は魂だけってことで良いのかな?


(誰かが覚えていておいてくれる限り……我々はこうやって『存在』し続けるんですよ)

 隼人くんのお祖父ちゃんはそう言いながら私に向かってニッコリと微笑んだ。

(『存在』し続けるんですか……?)

 だったら……いいな。
 そんな形でも真里や隼人くん、お母さんやカズちゃんの心の中で生きていければ――。

(変わるものがあって、変わらないものもあるんですよ)
(ところで……)
(ん? どうかしましたか?)

さっきからすこーしだけ気になってることを、もう一つだけ隼人くんのお祖父ちゃんに質問してみる。

(これから私はどうなるんでしょう?)

 隼人くんのお祖父ちゃんが頭をポリポリと掻きながらのんびりとした口調で私の質問に答える。

(そうですね……とりあえず……ご飯という訳にもいきませんので。私とお話でもしませんか?)
(……そう……ですね!)

 ともかく、焦っても仕方ない。
 まだ、イマイチ自分がどういう状況なのか飲み込めてないけど――。

――隼人くんのお祖父ちゃんと二人なら退屈せずにいられそうだ。

――エピローグ・完――