……って、そんなことを思ってる場合じゃなくて。

(へ? 私、お礼を言われるようなこと何もしてませんよ?)

 いくら隼人くんのお祖父ちゃんとはいえ、お礼を言われるような覚えは無い。
 むしろ隼人くんの身体を乗っ取っていたのだから怒られてもやむなしと言うか……。

(いやいや、孫のためにあんなに頑張ってくださったじゃないですか)

 隼人くんのお祖父ちゃんがまるで私を褒め称えるほうに両肩を軽く叩く。
 なんだか……自分が『良いこと』をしたみたいで照れくさい。

(あの……)
(うん? 何ですか?)

 自分が何をしてこんなに褒められてるのかはイマイチ分からないがせっかく会話できる人が目の前にいるのだ。
 ちょっと疑問に思ってることを聞いてみようと思う。

(ここって……『あの世』なんですかね?)

 私の記憶が確かならば――私は隼人くんとキスして……そのまま『消滅』したはずなのだ。
 だとすれば……隼人くんのお祖父ちゃんもいるこの場所はやっぱり『死後の世界』になるんじゃないだろうか?
 想像していたのとはまるっきり違うので確信は持てないんだけど。

 隼人くんのお祖父ちゃんは私の言葉に静かに首を横に振った。