――やっぱり、夢じゃなかったのか。

 元の体に戻った瞬間に……これまでのことが全て現実に起こっていたことだと認識した。

 真里ちゃんはどうなった?
 自分が元の体に戻ったからには――マリは?
 一つの体の中に入って……二つの魂はどうなった?

 声をかけようと力を入れるが「う……ん……」という声にならないようなうめき声しか出せない。

 体全体に力が入らないままもがいていると頭上から声が聞こえた。

「は……やと……くん?」

 真里ちゃんの声だった。
 どうやら真里ちゃんも意識は戻ったが体の自由が効かない状態であるようだった。
 その声に反応して、自分の体に渾身の力を込める。
 反応してくれたのは首の部分だけだった。
 視線を頭上に向けると――そこには真里ちゃんの笑顔。
 俺も必死に笑顔を作ってそれに応える。

「戻っ……た?」

 口をぎこちなく動かし、『元に戻る方法』の成否を尋ねてくる。

「なんとか……か……な?」

 そう俺が答えたとき、真里ちゃんの顔が苦痛に歪んだ。
 処女だと聞いていた、きっと……体の感覚が戻ってきたのだろう。

「あ……! ゴメ……ン! すぐに抜く……から」

 体を動かして真里ちゃんの中に入っている自分の分身を引き抜こうとする……が力が入らない。

「――いい……よ。隼人くん。しばらく……このままでも」

 そんな俺の様子を見て、真里ちゃんが気遣うように言ってくれる。
 この時、俺は『マリ』との約束を思い出した。