――言い切ってしまってからハッとした。

 隼人くんが驚いた顔でこちらを見つめている。
 周囲の人も、何もないはずの空間に向かって叫んだ私に注目している。
 慌てて口をつぐんだが……もう時すでに遅し、だ。

 周囲の人のことは構わない。
 所詮はただの通りすがりの人だ。
 問題は――隼人くんだ。

(お前……『もうすぐ何もかも終わる』って。まさか……ひょっとして――)

 そこまで言って、今度は隼人くんがハッとした表情に変わる。
 再び周囲の人の注目を集めたくは無いので黙っている。
 だが、心の中ではこんなことを考えていた。

――『ひょっとして、自分が消える事を知ってたのか』、かな……。

 なんだ、やっぱり隼人くんも知ってたんじゃないか。
 大きく「ふう」とため息を吐き出した――。

 ため息とともに互いの会話がなくなり、耳には周囲の雑踏だけが聞こえる。
 でも、互いの無言はそんなに長くは続かない。

 視線の先にこちらに向かって歩いてくる真里の姿が見えていた――。

――私が消えるまでの……カウントダウンが着々と時を刻む。