さて……と、話の流れも向いていることだし。
 そろそろ隼人くんにもちかけようと思う。

 私から――隼人くんに向けた『約束』を――。

(何度も好きって言わせて楽しいのかよ……こっちはその度に恥ずかしいって言うのに)

 その言葉が引き鉄になった。
 私が隼人くんに残したい『約束』――私を覚えておいてもらうための『私の欠片』。

「楽しいわけじゃ……ないよ」

 ポツリと呟いてみる。
 いじめてみるのは楽しかったけど、真里のことを好きだと言わせるのは――平気にはなったけど楽しくはない。

 私の返答に隼人くんが噛み付いてくる。

(じゃあよ、なんで何回も確認すんだよ。自分が好きって言われるのを何回も繰り返してさ。どういうつもりだよ?)

 やっぱり……隼人くんは勘違いをしている。
 『約束』を交わすための伏線として、その間違いを正す。

「違うよ――隼人くん。あなたが好きなのはね、『私』じゃないの。隼人くんが好きなのは――『真里』なの。
私はね、マリだけど真里じゃない。
隼人くんが好きなのは……私だけど私じゃないの」

 私の言葉に隼人くんが押し黙る。
 押し黙ったままの隼人くんにさらに語りかける――。

「だからね、『約束』して。私が『元に戻ったら』……もう一度ちゃんと私に『好きだ』って告白するって」