「あら?今日は学校に行くの?」

 リビングルームにいた女の人に声をかけられる。

 眼鏡をかけてボサボサの頭をした人。
 目の下にクマができていて徹夜明けっぽい感じの疲れた顔。
 キチンとした身なりをしていればそれなりに美人な感じかな?
 この体の持ち主のお母さんだろうか、少し若い気もするがそれぐらいの年代に見える。

「う……うん」

 当たり障りの無い返事をする。
 この体の持ち主の情報を全然知らない私としては、怪しまれないためにもこの女性との会話を最小限に抑えておきたい。

「そうなの……珍しいわね」

――あれ?珍しい?

 つまり……この持ち主の子って……あんまり学校行ってないのね。

 あーーーーー!だったら私服にすれば良かった!

 私服の方が補導員とかに捕まりにくいんだから、
私の体を探しに行くのも好都合だったのに!

 それでも学生服を着たまま、カバンを持って、とりあえず玄関を出る。
 ココがどこかすら分からないんだけど外に出なきゃ体を探しに行くという話も始まらない。


――元に戻れるかどうかも分からないけどさ、

 今は自分の体を見つけることが何より大事だと思う!

 でも……いきなり挫折しそうだ……
 玄関を出て見る景色
 ここは……本当に一体どこなんだろう?

 ……せめて……私の住んでた場所からそんなに遠くありませんように。