(――何を話してたんだよ?)

 私に質問を軽く流されたことでプライドが傷ついたのか、隼人くんがムスっとした顔で再び聞いてくる。

「あのねえ、隼人くん? 乙女には人に聞かれたくない話がイーッパイあるんだよ?」

 私の切り返しに隼人くんは少し怯んだような表情を見せる。
 だが、それでも完全には撤退せずにまだ食い下がってくる。

(お前さ、やっぱり何かおかしいよ! 大体さ、『俺にも聞かせられないような話』って何だよ?)

 わざわざ『聞かれたくない話』だと教えてあげたのに、それでも内容を聞きたがるなんて。
 まったくデリカシーのないヤツだ。
 ここは一つ『約束』をする前にちょっとからかってみよう。
 
「――隼人くんの『好みのタイプ』ってのを話してたのよ」

 私の一言に「ええ!?」と動揺する隼人くん。

……好みを聞かれたら困るようなことでもあるんですか?

(お、お前、真里ちゃんにどんなことを教えたんだよ?)
「いやー、別に大したことは教えてないよ。机の中に入ってるDVDの内容とかを参考までに聞かせただけで」

 実際はそんなことは話してないけど。
 私が何か言う度に動揺している様子をみせる隼人くんが何だか面白い。

(お、お、おま! 何てことを……!!)
「嘘に決まってるじゃん」

 私のアッサリとしたネタばらしに両手を地面に着いてまで脱力してみせる。
 本当に真里のことになると素直になるんだから。

――この分だと『約束』はあっさりと交わせそうだ。