ちぇんじ☆

「んー！　やっぱ最高～！」

　白いご飯にお味噌汁、玉子焼きに焼き魚の典型的な和風の朝食。
　何より隼人くんの体に一番マッチした味付けに舌鼓を打つ。

「おおげさよ、マリちゃん」

　お母さんが少し照れ気味に謙遜する。
　いやいや、現在の私にとってこの味に勝てる料理は存在しないように思える。
　もはや、お母さんに注意されるヒマが無いくらい食べるのに集中している。

「今日は何時くらいに家を出るの？」

　お味噌汁を飲んでいると、お母さんがそう尋ねてくる。
　うーん、八時過ぎには真里の家のある駅の改札前だから、朝ご飯を食べたらすぐに仕度しなくちゃだよね。
　今が七時十分だから――。

「七時半には家を出ようと思ってるよ」

　そのぐらいに家を出れば余裕を持って真里との待ち合わせ場所に着けるはずだ。
　私の答えを聞いてお母さんが「ふむ」と小さく一つ唸った。
　ほえ？何か都合の悪いことでもあったかな？

「どうしたの？」

　私の問いかけには答えず、お母さんはいきなり私の後ろの方に向かって叫ぶ。

「隼人！　そこいるでしょ？　カズちゃん起こしてきて！」

　あ、そういえばまだカズちゃんが起きてきていない。
　隼人くんが驚いたような顔をしてからカズちゃんの部屋の方に向かって走っていく。

　隼人くんが走り去った方角を指差しながら、

「――見えてるの？」

　お母さんに聞いてみる。

「あはは、なんとなくそこにいるんじゃないかな～？　と思ってね。ちゃんと呼びに行った？」

　あっけらかんとした表情で答える。
　うーん、この異常なまでの勘の鋭さもどこからきているのか？
　まあ、残念ながら追求はできそうもないんだけど……。