ちぇんじ☆

　部屋に戻ると、昨晩と同じく隼人くんが戻ってきていた。
　昨晩と違うところは――きっと私が起き出したのを確認して部屋に戻ってきたのだろうということだ。

「あ、おはよー」

　なるべく、出来る限り普段通りの行動を取ろうと心がける。
　私の普段と変わらない様子に多少面食らった様子ではあるが隼人くんが挨拶を返してくる。

（お、おお。おはよう）

　昨夜のことを気にしているのか、どことなくぎこちない。
　それに……気のせいか涙目。
　部屋から出て行っている間に何かあったのかな？

　まあ、男の子に涙の理由を聞くなんて野暮な真似はやめておこう。
　ただ一言だけ。

「どこ行ってたの？」

　これだけは聞いておく。
　この部屋の主を追い出してまで――部屋を占領して泣いていたのだ。
　とりあえずの罪悪感は感じているワケで。
　隼人くんがどこで時間を潰していたかによって私の罪悪感の大きさは変わってくる。

（ん？　ああ……カズさんとこに行ってた）

　少しホッとする。
　隼人くんにとっては最高にくつろげる場所だろう。
　でも……カズちゃん寝てなかったの？
　ちょっと疑問に感じた。

「へえ、……って、カズちゃんずっと起きてたの？」
（おま！　『カズちゃん』て、ちゃんと……ま、いいか。起きててもらったんだけどさっき寝たぜ）

　ああ、そういえばお母さんの前以外では『カズちゃん』って呼んでなかったっけ。
　本人も流してくれてたからついついそう呼んじゃうな。
　隼人くんにとっては――本人は知らなくても――お父さんなワケだしね。

――これからは気をつけて『カズさん』って呼んでみよう……できる限り。