ちぇんじ☆

「次の満月まで待たないといけないってこと？　それに霊力を持った人間同士って……私も霊力があるの？」

　冷静に、冷静にと、そう自分に言い聞かせながらお祖父ちゃんに尋ねる。
　どうにかして自分を落ち着かせないと……またお祖父ちゃんに掴みかかってしまいそうだ。

「うーん、かすみちゃんにはほとんど霊能力は無いと思うんじゃよね」

　『満月の夜』のことはすっ飛ばして、私の霊力に関してのみ答えが返ってくる。
　私にはほとんど霊力がない？
　じゃあ、何で入れ替わっちゃってるの？

「いや、でも入れ替わってるじゃないの！？」
「それはカズの霊力が大きすぎたんじゃろうなあ」

　のんびりとした口調で答えるお祖父ちゃん。
　少し唖然としかけた私に追い討ちをかけてくる。

「それに――」
「それに？」
「霊力のないかすみちゃんと入れ替わってもうたのは――」
「もうたのは？」
「ほら、接着剤って一回剥がすと次も剥がれやすくなるじゃろ？」
「はあ……」

　もはやお祖父ちゃんが何を言わんとしているのか……薄々気が付いてしまった。
　次の言葉を聞いてもツッコミを入れるのを我慢する体勢を取らないと――。
　そして……予想通りの言葉はやってきた。

「それと同じでよ、一回魂を無理やり剥がしてるからよ。魂が体から剥がれやすくなっとるんじゃろうな。
そんで、たまたま横にあったかすみちゃんの体に入ってもうて。かすみちゃんの追い出された魂は『空き家』になったカズの体に入ってもうたんじゃろ」

　ああ、やっぱり予想通り。

――魂は接着剤でくっついとんのか！！！！！！

　ヨシ、何とかツッコミを心の中だけに抑えることができた。

　ツッコミを入れるために平手の形になった右手を、左手で必死に抑えながら心の中でそんなことを考えていた。