「あ、かすみおねーちゃん!」

 私の呼びかけに元気良く応えてくれるカズちゃん。
 人懐っこい子犬のようにこちらに駆け寄ってくる。
 こうやって見るととても何かの病気に感染しているようには見えない。
 そんな様子が――なんで隔離してまで治療に専念しなきゃならないのだろう?
 そんな思いに私をさせる。

「調子、良さそうだね!」

 カズちゃんが先日、一哉くんが患っていたものと同じ病気に感染した。
 そのことを本人から聞いていたため、元気そうな様子を見て思わずそんな言葉をかけてしまう。
 本当に、なんでカズちゃんが引越ししないといけないんだろう?

「うん、まだそんなに悪くはないから……」

 私の少し意地の悪い問いかけに、困ってしまったようにカズちゃんが答える。

――困らせるつもりは無かったのに――。

 引越しても手紙書くから、とか会いに行くからとか。
 そんなことを伝えるために声をかけたつもりだったのに、
 素直になれない自分に少し腹が立つ。