「お母さんは……その、なんでカズちゃんに会いに行ってたの?」

 ここまでの話を聞いて、少し疑問に感じたので率直に質問してみた。
 いくら姉弟みたいな幼馴染とはいえ、普通あんな場所まで会いに行くものだろうか?
 昨日のお母さんの山登りの様子を鑑みるに――かなりあの山に登り慣れてる。
 それほどまでに何度もカズちゃんに会いに行っているのだろう。

 ふう……と小さくため息をついてからお母さんは答えてくれる。
 極めてシンプルで分かりやすい答えを。

「――愛してるから、かな?」

 そう答えて悪戯っぽく微笑みながら私にウィンクする。
 でも、その言葉の口調から、決して冗談でないことは伝わってきた。

――愛してる。

 お母さんとカズちゃんの様子を見ていても、そんな風には感じなかった。
 でも、さっきのお母さんの言葉が嘘や冗談でないことは感じる。
 どう見ても友達にしか見えない二人なのに……愛してるねえ。

――これも大人の世界なんですかね?