――せっかくの楽しい夢だし、このまま夢の中だけでもデートを楽しもう。

 そう思った瞬間に街中だったはずの風景が切り替わる。
 場所は花が咲いている、少し大きな草原。
 向こうに山が連なっているのが見えて、
 山間に夕日が沈んでいってるのが見える。
 夕日に照らされて周囲の景色は綺麗なオレンジ色に染まっている。

 私は草の上に座っている。
 私が好きな『誰か』もその横に腰掛けている。
 好きな人が手を地面についていて、私はその手の上に自分の手をそっと重ねる。
 音の無い夢の中、その人に心の中で呼びかける。

 その行動が合図だったように、彼がこっちを振り向く。
 夕日に照らされて、それでも優しく微笑みながらこちらを見つめるその顔は

――隼人くんの顔だった。