夜になって、お母さんは、社長と一緒に帰ってきた。
紗智「お母さん…?」

母「大丈夫よ、さっちゃん。」

母と社長は、ソファーに腰掛けた。

母「弁護士さんの話しだと、彼は全て認める供述をしているそうよ。」

本当にお父さんが…? 
私は、落胆した。

社長「多分、お父さんは、会社の上司の支持で、あるプロジェクトの為に、政治家に闇献金を渡したのではないかと、弁護士さんが言っていた。どうやら、警察も、その政治家の他の裏金工作を調べていて、お父さんの会社のか名前が挙がっていた。それで、色々調べられる前に、会社は、お父さんを警察に差し出したんだな。…裏金をカモフラージュする為に。」

母「それなら、何も、あの人じゃなくていいじゃない!あの人がこんな事になって、一番被害を被るのは、紗智なのよ!マスコミだって、大騒ぎしてるじゃない!」

社長「だから…だろうな、こんなに、大騒ぎになったお陰で、うやむやになる政治家がいる。」

母「そんなの酷い、あの人は、娘より会社を選んだって言うの?」

社長「弁護士に、離婚届けを預けていたと言う事は、君達の事も、ちゃんと考えていたんだと思うよ。」

母「そんな…、そんな事で…」

母は、また泣き出した。

社長「きっと、会社の沢山の従業員の事を考えたんだよ。会社がした事は、納得出来ないが、何千の従業員と、その家族の事を考えたら、私だって、そうしていたかもしれない。」

皆、沈黙する。
お父さんは、会社の人達の為に…?

社長「片桐君、とにかくうちの事務所にも、警察も弁護士の所も、何処に行っても、マスコミが酷い、ここも、じきバレるだろう。」
片桐「…はい。」

社長「さっちゃん親子の為にも、私が記者会見を開くから、私には、社長として、この娘達を守る義務がある。…セッティングしてくれないか。」

片桐「わかりました。」

社長「さっちゃん、君のお父さんは、とても強くて、優しい人だ。嫌いになったり、恨んだりしちゃ、いけないよ。」

社長は、優しく笑った。

紗智「はい。」