恥ずかしさのあまり、ただ突っ立っているだけの私に、お兄ちゃんが私の手をむぎゅっと掴んで引き寄せた。

和泉君の顔がムッと歪んでいる。


「モカ!!こんな奴と一緒にいるんじゃねえ!!お兄ちゃんと帰るぞ!!」

「ええっ!?」

「はああっ!?」

私と和泉君が驚きの声を上げていると、お兄ちゃんは後ろから来たタクシーをすぐさま呼び止めた。

そして、抵抗する間もないまま、私をタクシーの中に放り込み、続いてお兄ちゃんも乗り込んでくる。

「出してください」


あっけにとられている和泉君を残したまま、タクシーはブーンと走り去ってしまった。

それは、ものの数分の出来事で…。