「あ、希帆ちゃんだ」
「美和さん、どういうこと?」
「この平手打ちの音は
希帆ちゃんが私を守ってくれる
昔から変わらない音なんだぁ」
「そっか。
俺には聞こえなかったけど」
「私に聞こえてたらいいの!!」
そして美和は彼に微笑んで
またゆっくりと保健室のベッドで
目を閉じた。
中庭中が静かな空気に包まれた。
なんだか静止してしまったみたいに感じられた。
「き…ほ……」
「バカにしないで!!」
私の声が凛と響く。
あたしはそれだけを言って
帰ろうと思った。
でも振り返ったときの准一は
軽く笑っていた。
まるでそれだけでいいのかって
言うかのように。