今俺が見ている映像は、
よくあるドラマのシーンみたいだ。


でもこれは、ドラマではない。


現実の映像なんだ。


俺は何も言えず、ただ、
立つことで精一杯だった。


マナと知らない男が仲良く手を繋ぎ、マナの家の方へ向かっていく。


マナ…気付けよ。
俺がここにいるって。



『気付けよ…』


その声は、マナには届かない。



マナは笑顔で接している、そんなマナを見ていると…苦しくて、苦しくて…


その苦しさが涙となりそうだった。



でも俺は必死に抑える。


俺は目を閉じた。


これが夢だと信じたいから。


再び目を開けると─…

夢ではなく、またあの映像が写る。


『意味分かんねぇ…』



遠くなっていくマナ達を、俺は目を細くして見た。



マナを追い掛けて、二人を裂けばいいのに…



俺にはできなかった。