暫くすると、急いで駅の階段を下りてくるマナの姿が見えた。


その頃になると、俺の苛立ちは治まっていた。


一生懸命俺の元へと走るマナの姿に、胸が痛くなる。


そんな走ってこなくても、俺は待ってるのに…



『はぁ…はぁ…ごめん!待った?ってかなり待ったよね…ごめん…』



俺はマナの乱れた髪を直す。


『全然。俺待つの好きだしさ?』



『ホント…ごめんね…』



『じゃあ、俺のワガママ聞いてくれる?』


『うん…何?』


俺はマナの質問に答えなかった。


マナの手を強く握り、
俺の部屋へと誘導し、
甘い世界へと連れて行った。


俺の苛立ちを、
無理矢理感じさに変えた。

それでもマナは、
俺を小さな体で受け止めていた。


俺はそっとマナに囁く。


『まだ帰さないよ?』



マナは俺をギュッと抱き締め、俺もマナをギュッ抱き締めた。


そして、二人で堕ちていった。


二人にしか感じる事の出来ない、世界へと─…