これから《百合》と呼べるだけで、こんなにも嬉しいなんて─…


俺、百合の事好き?


そんな訳ねぇよ。



ただ、ただ、緊張するだけだって。


よくあるだろ?


女の子と話すと緊張する事。


誰だってそうだろ?


百合は特別とか、そんなんじゃない。



多分ね?



『光輝─!一緒に帰るか?』


と、廊下からタクミが俺を呼ぶ。


『わりぃ!今からマナと会う!』



『そっか、分かった!じゃあな!』



『悪いな!じゃあな~』


今からマナと会う約束をしていた。


一日置きに、マナと会っている。


その度、マナは学校であった楽しい事を話してくれた。


でも正直、あまり聞きたくない。


だって、マナの話の中には、必ず男の話が出てくるから。


その話を聞く俺の心境を、マナは気付いているのだろうか?


悲しいとか、寂しいとか、嫉妬とか…


マナは知っててそんな事言うの?