いつの日だったかな。


あまりはっきり覚えていない。


曖昧にしか覚えていないんだ。
あの時の俺は、必死だったから。


──…キーンコーンカーンコーン


校内に、響く聞き慣れた音。


俺は、タクミが鈴木百合の事を《百合》と呼び捨てで呼ぶのが、あまり好ましくなかった。



何故と質問されたら、
答える事は出来ない。

でも──…なぜか嫌だった。



『なぁ!!』


『私、なぁっていう名前じゃないんだけど?』


『じゃあ…百合?』



『あんたに百合って呼ばれたくない!』



そんなにはっきり言うなよ。



『俺、あんたっていう名前じゃないんだけど?』



『じゃあ何よ?』



『光輝!!』


『こう…き』


『おう!!これからそう呼べ!』



俺さ?
この時すごい平然としてた。


でもホントは、心臓が爆発しそうなくらい速く動いてたんだ。


俺、何で百合と話すだけで、こんなに心臓が動くのだろう?