タクミと疾風…
まだかよ…
一人とか惨めだろ?


しかもさっきから、
いろんな人の視線が痛いし…
早く戻って来いよ…



俺はふと顔を上げる。


俺は人混みの中から、
ある人と目があった。



大きな瞳に、サラサラな栗色の髪の毛──…



俺は暫く動く事が出来なかった。

でも、心は煩いくらいに動いていた。



『あっ…』


彼女が俺の事に気付く。


『何?』


『………』



ようやく俺は動く事が出来た。



『…見んなよ』


冷たい言葉を彼女に浴びせる。


彼女は怒った顔を見せた。

そんな彼女を見て、
《可愛い》と思ってしまった俺は…


最低だろ?



彼女は友達とどこかへ行ってしまった。



もう目の前には彼女はいないが、俺の心はドクンドクンと鳴っていた。