『光輝?』


百合は細くなった目で俺を見上げ、不思議そうな顔をした。


俺は百合に顔を近付け、
百合の唇がある場所へと向かう。


そしてそっと唇に触れる。

音が小さく鳴る──……


『光輝…?うつるよ?』


『いいよ?うつしてよ』


百合を蝕む病原体を、
俺の手で消し去りたい。


そんな事は出来るはずがない。


だから、俺は願うしか出来ない。


《百合が早く治りますように》と願いを込め、
口づけをした──…


もう一回しようとした時、タイミングよく百合の部屋がノックされた。



『百合?大丈夫か?』


その犯人は─……


『パパ…うん!大丈夫だよ…ごほっ…』


『そうか、無理しないようにな。光輝君、少し話がしたい。出て来れる?』


優さんが俺を呼んだ。


俺はその場を離れ、
ドアをゆっくり開けた。