俺は百合を好きじゃない。


愛しているんだ。


『光輝君なら百合を任せれそうかな…百合をよろしくね』



『…はい…』


百合…早く起きてよ…

百合のお父さんにも
認められたよ?


あとは百合が目を醒まして、俺の告白を聞いてくれるだけでいい─…


百合…今どこにいるの?


少しずつ、蝉の鳴き声が大きくなっていく。


百合は一向に目を醒まさない。



『あの…』



『どうかしたかな?』



『鈴木優さんですよね…
俺大ファンなんです…
あなたの撮る写真がすごく好きで…』



『ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ』



『何故…写真を撮ろうとしたんですか?』



優さんは、何も答えず、
俺の目を見た。



蝉の声は鳴り止まない─。

この病室を、
蝉の声が埋める。