「連れてきたぜ。」
目的の場所へと着いた瞬間、掴まれていた腕は解放された。
解放され、逃げだそうと来た方に体を向けたが
「--っ…」
「逃げられないよぉーん。」
「やっべぇ、べっぴんさん。」
「これが噂の"葵ちゃん"?」
30人以上いる男達に出口を塞がれ、ジリジリと嫌な笑みを浮かべながら歩いてくる。
見ただけでわかるほどの悪面に腰が抜けそうになった。
「な、なんで…-名前…」
近付いてくる男から距離を取ろうと後ろへ下がる。
震える声で聞いた私に、返答することなく一層笑みを深めた男達。
「やっ、近付かないでぇ…」
涙ながら訴える私は
「この子を虐めないでください。」
後ろから抱きしめられた。
知らない温もりと匂いにゾワリと鳥肌が立ち、お腹に回る腕を解いた。
振り返った私の視界に入ったのは
「えっ…」
見たことのある男の姿。
「えっと…」
誰だか思い出せない私に、男の顔が凍り付いた。
「忘れたって酷くねぇか?
高橋葵さん。」
「あ、あ、あ…-」
男の豹変に、昔の記憶が頭を過った。
叩かれた頬の熱が冷えるほど、血の気が引いた私は
「い、飯塚…-雄介…」
震える体を抱きしめた。