「おい、葵!!」


携帯から聞こえる健吾の焦る声。
耳から携帯を離し


「葵!どうし…--プチッ」


携帯を見ることなく、電話を切った。


視線の先は、懐かしい彼の姿。



久しぶりに会った彼にドクンドクンと心臓が脈打った。

久しぶり会った彼は、2ヶ月前に会った時と変わらない。

だけど、前と違うのは私を見る瞳。



寂しそうに、辛そうに私を見る瞳に胸が痛くなった。



「みんな心配してる。」


「---っ…」



(みんな心配してる。)

心の言葉に、頭の中を駆け巡る沢山の思い出。




未来、会いたいな…

かずくん、怪我完治したかな…

銀くん、試験どうだったかな…

美穂、銀と仲良くやってるかな…

アッキー、元気かな…



--みんなに会いたい…


頭に浮かんでくるみんなの笑顔に、目の前が歪んで見えた。


歪む視線の中で、心が私に向かって歩いてくるのが見えた。


ジッと私を見据えゆっくりと歩く心。
私は心の視線に捕われ、指一つ動かすことが出来なかった。


一歩一歩近くなる度に、鼓動は速くなり苦しい。

逃げ出すことも、近寄ることもできない私はただボーッと心が歩くのを見ていることしかできなかった--…