ビアガーデンの店員が、注文した生ビールを持って来た。


『お待たせ致しました。生ビールに成ります。』


そう言うと店員はリンの前に生ビールを置き、軽くお辞儀して、俺達の席から離れて行った。


『それじゃあ、乾杯』


『乾杯』


俺とリンはそれからしばらく他愛もない話しで盛り上がった。


その話しの流れで、自分達の小さい頃の話しになった。


『ねぇ、たっちゃんの子供の頃ってどんなだったの?』


リンがそう俺に尋ねた。


俺は何故か咄嗟にごまかした。


『へ…』


『俺の子供の頃?…』


別に、話したく無い訳では無かったが、俺は今まで自分から話そうとはしない話題だった。


そして、その話題から“逃げる”かの様に俺は続けざまにリンにこう言った。


『どうしたの?…息なり。』


俺がそう言うと、リンは少し表情を曇らせながらこう言った。


『別に、話したく無ければ良いんだよ。』


多分、俺の事を気遣ってくれたのだろう…


曇っていたリンの表情が和らぎ、俺を“安心させる”かの様に優しく微笑んだ。

そのリンの表情を見て、俺もまた、リンに気を使わせたく無いから、俺は笑いながら言った。


『いや、別に話したく無い訳じゃないよ』


『ただ…』


『ただ?…』


リンが首を軽く傾げた。


『この話しはちょっと長いよ?』


俺のこの言葉に対して、リンは優しい微笑みを浮かべたままこう返してきた。


『良いよ別に』


『私も、たっちゃんの事をもっと知りたいし。』


『たっちゃんさえ良ければ、聞かせてよ』


俺はそのリンの優しい表情と、言葉に応えるかの様に昔の話しを始めた。


遠い昔の話しを…