「・・・空?もう付いたよ、降りようよ」


気付けば、もう降りなければならない停留所だった。
時間が経つのは恐ろしいくらいに早い。
考えてる暇もありゃしねー。


でも俺は降りるどころか、座席から動きもしない。



「空・・・?」



戸惑う由美に、俺は手を差し出して、由美に千円札を握らせた。



「何?これ」



「これで、タクシーでも拾って帰って」


「え・・・・・・」


「ここからなら家近いから足りるだろ?」


そう言って、また花火の方に視線を戻した。

だけど、由美は動かないで、ずっと立ち尽くしている。



「・・・ねぇ・・・何が、言いたいの・・・?」


声が震えている。
今度は、嘘泣きじゃなくて、本当に泣いてしまうかもしれない。


「お前なら、この意味分かるだろ?」