空said


花火が夜空にたくさん開いては閉じていく。


人込みの中、俺と由美は周りとは逆方向に歩いていく。




はぁ・・・ダリ。




由美とあんな約束するんじゃなかった。
だったら、椿と一緒にいれたのに・・・・・・・・・・


とか、相変わらず寒いこと考えてる俺。
今普通に自覚してる。


俺椿のこと好きっぽい。


っぽいじゃなくて、好きだ。



もっと一緒にいたいとか、もっと知りたいとか、好きな奴以外には持たない感情だろ?



久し振りに感じた、この感覚。



多分、中2以来。




俺は小さな溜め息をついた。
それが由美の耳に聞こえたのか、俺を見上げた。



「怒った?空」



「ちょっとだけ」



「そう・・・ごめんね」



椿に知られたとき、なんか嫌だった。
椿は俺みたいな男を嫌うから。

遊び人や変態は御免らしい。


そんなの言ったら、男なんて全員無理だっつーの。



「いいよ。由美と先に約束してたんだし、そっち優先させるのが普通じゃん」



俺が普通じゃないだけ。



その後は、バスに乗って窓から花火を眺めながら、ぼんやりとしていた。




だんだんホテル街に近づいていく。
いつもと変わらない。

こんなの日常茶飯事だ。

・・・だけど・・・。