*    *    *

あたしは先週の土曜日、ようやく新しい携帯を買った。

やっぱり携帯がないと何かと不便だから、と思い買いに行った。



流石に買った瞬間は幸せすぎて、眺めながらニヤニヤ笑っていた。



そんな小さな幸せをぶち壊したのは、この時だった。




「ねぇねぇ椿、心!」



休み時間、佳保がふわふわの髪を揺らしながら、こちらまで駆けてきた。




「どうしたの?なんかあった?」



佳保は興奮気味に頷く。
あたしと心は顔を見合わせる。

すると、心はニヤっと笑った。

この笑い方は・・・・・・。



「何々~?好きな男でもできたのー?」


「もうー、やめなよ心ー」


あたしも心に合わせて冗談ぽく笑った。


二人で佳保の顔を見ると、固まった。



・・・・・・マジで?


佳保の顔はいつになく、真っ赤。
まさか、図星だったり・・・?


「え~!うっそ!マジ?誰、誰、誰!?」


心は身を乗り出して、佳保に顔を近づける。
恋愛になると、興味津々な心。
自分の恋愛には無関心なくせに・・・。


「誰?イケメンだったりすんのー?」

あたし達はもう既に、佳保に好きな人がいると言う前提で話を進めている。


でも、この反応は絶対にいる!




「うん、・・・超かっこいい」


うっとりと遠くを見つめる佳保は、重症。
相当惚れてんじゃん。


心はしつこく“誰、誰?”と連呼。



佳保は顔を赤く染めながら“秘密にしてねっ”と言った。
頷き、佳保に耳を傾けるあたしと心。








本当、何処まで意地悪な運命なんだろう・・・・・・。








「―――――渚・・・なんだ」




一瞬、時間が止まったのかと思うくらい、あたしは驚いた。
目を見開いて、突き付けられた現実を皮肉に思う。