「空・・・?なんか首んとこ」


椿の言葉にはっとして、俺は我にかえる。



「え、首?が何?」


「赤くなって・・・・・・あ」



すると、椿は何かに気付いたように声を上げた。
もしかして、アレ?


「さっき、また彼女とイチャイチャしてたんでしょー」

キスマークを嫌そうに睨む。

やっぱりキスマーク付いてたのか・・・。
あんだけ付けんなって言ったのによ。


「はは、バレた?俺も健全な男子高生なんで」

俺は乾いた声で笑う。


「・・・あはは、だね」


いつもこんな事言うと、必ず最低だとか、遊び人とか言ってくるのに、椿は肯定しただけで何も言ってこない。


目が揺れている。
耳に髪の毛を掛ける椿。

その仕草は、緊張した時とか、怖いとき、動揺しているときにする、椿の癖だ。



「また何かされた?」

俺の質問に顔を上げる椿。

「・・・あ、ううん!別に何もないよ。それより、空は部活だよね!」

またこれだ。
コイツは俺以上に話をはぐらかす。


「うん、レギュラー決めんの近いから、・・・もう行くわ」



「うん、バイバイ」



椿のことをもっと知りたい。


丁度あの日からだ。
皆で遊んだ次の日から、椿は学校を1週間程休んだ。

それに、携帯だってそうだ。

コンクリートに落として壊れたって、
落としたくらいで壊れるか?

電源が切れることはあっても、壊れることはあんまりないだろ。


俺があの日に椿に電話を掛けたのは、
カナリしょーもない内容。


下ネタが大嫌いな椿にしつこく言いまくって
不機嫌にさせて、謝ろうとしただけ。

今考えれば下らな過ぎて笑える。


幼稚園児か、俺は。


心がいくら椿の家電に掛けても出なかったらしい。


渚の家に残ったのは、椿だけ・・・。
俺はハっとする。