あたしがその他大勢で、心がリン役で空が王子役の台詞で練習した。
「―――見習いだから下手ですよ」
これは、終盤。
王子様がリンにヴァイオリンを作ってって、頼む所。
あたし、ここすごい好き。
「君が作ったヴァイオリンが欲しいんだ」
ここ!この台詞が大好きなんだ。
「あなたの頼みなら、断れないですね」
「で、ここでざ~っと流れて、最後のシーン」
あたしは台本を見ながらナレーターみたいな事を言う。
「ありがとう。これは一生の宝物にするから」
「そんな・・・いい音なんて絶対出ないですよ?」
うんうん、いい感じ。
あたしはまるでドラマを見ている気分だった。
だってこんな美形二人が、ロマンチックな台詞言ってるんだもん。
「それでも嬉しいんだ。ありがとう」
「・・・・・・」
そう言って、二人は黙った。
・・・・・・・・・・・・・・・ん?
「ねぇねぇ、次キスシーンだよ?」
あたしがそう言うと、二人とも真顔でこっちを見てきた。
「今ここでしろと?」
・・・え、しないの?
どうせなら最後まで通した方が良くない?
それに物語の続きが気になるんだって。
「止めてよ椿。こんなアホと出来るわけないでしょ」
「あ、そっか」
「おい、そこ肯定すんな」
空が不機嫌そうに頭を小突いてきた。
「あはは、ごめんごめん!」
笑いながらそう答えると、心に腕を引っ張られた。
・・・ん?いきなりなんだ?
「ちょっとこっち!」
「え?・・・うん」
あたしはいきなりで意味が分からなくて、戸惑いながら着いて行った。
教室の隅に行って、心がコソコソ話し出した。