あたしは空の横を通って、自分の鞄を手に持った。



「なんなんだよ、教えろよ」



追いかけてくる空を無視して、あたしは教室の鍵を持って出た。



「早く帰って。鍵閉めるから」



ああ、あたしってとことん可愛くない。



認めたくない・・・
認めたくないけど、あたし、今嫉妬してるんだ・・・。

空とキスしてた、あの子に。



嫉妬なんて、好きだからするものでしょ・・・?


なにのに・・・・なんでよ。



「ちゃんと言ってくんなきゃ分かんねーよ!」




そう言って、空はあたしの腕を引っ張って、また教室に戻した。



ピシャッと扉を乱暴に閉める空は、きっと怒ってる。




「午前中のことで、心当たりないの?」



そう言うと、空は面食らった顔した。
そうだよね・・・あたしに見られたなんて思ってもなかっただろうしね。


「あれは・・・」



そこで途切れる言葉の理由は、言い訳のしようがないからだ。



「純粋になるだとか言っても、やっぱり無理じゃん。賭けはあたしの勝ち?」




「・・・・・・・・・・・・」




完全に黙ってしまった空。


困った顔してあたしから目を逸らす。




あたしは空の彼女でもないから、怒れる資格なんてない。

それなのに責めてしまう。




「でも、空はあっちの方が“らしい”よ。無理に変わろうとしなくてもいいじゃん」



・・・嘘・・・・こんな事本当は思ってない。
お願い・・・・・・『皆の空』があたしは嫌なんだってば・・・。




重苦しいこの雰囲気から逃れたいのに、空が扉の前に立って塞いでしまってる。




「――分かった・・・・・・」




俯いて力なく答える彼。


あたしが言った事なのに、激しく嫌悪感に襲われた。
・・・・・・そんなすんなり分からないでよ、馬鹿・・・。