二人で同じ所探すより、分かれた方がいいから、俺と心は、南館と北館に別れた。


俺が北館で、心が南館。



予鈴が鳴っても俺は探し続けた。



理科準備室、保健室、使われていない会議室、三年の廊下まで行ったけど、アイツは何処にもいなかった。




ついに本鈴まで鳴って、教師がよく通る廊下を避けるようにして、最後の場所となった、屋上を繋ぐ階段まで行った。




ここにもいなかったら、何処を探そうかとか考えながら、一段二段と足を進めた。



「・・・・・・あ・・・」




か細い声に、ぱっと顔を上げると、
顔色の悪い椿が、踊り場の所に突っ立っていた。




「やっと見つけた」




俺は溜め息をついて、階段を上って、椿の所まで行こうとした。




「こっち来ないで!」





「は?」



涙を堪えて顔を歪ませている。
スカートをぎゅっと握り締めて、俯く姿は頼りなかった。


「何、訳わかんねーこと言ってんだよ」



俺は少しむっとして、更に近づいた。
椿は嫌そうな顔して一歩一歩後ろに退く。




「もう・・・!放っといてよ・・・・・・っ」




「ごめん、放っとけない」





俺は何言われても素直には聞けない性格なんだ。




踊り場まで行って、椿と向かい合う。






「本当にごめん。・・・あの黒板、由美がやったみたいで・・・・・・俺の所為だから」




「そんな事、どうだっていいよ・・・」




素っ気無い返事。
ああ、怒ってるよな。
俺嫌われた?



この場合、どうすればいい?


他の奴みたいに、抱き締めたら落ち着く?
慰めの言葉を掛ければいいのか?



俺は椿相手じゃ、本当に何も出来ないみたいだ・・・。




「なんで・・・あたしばっかりなの・・・・・・?」




椿は声を震わせて泣いた。
唇を噛んで、まだ涙を堪えようとしている。