簡単には死ねない事くらい経験上分かっていた。

だけど、日々宛もなく、目的もなく暮らすせいでお金はあっという間になくなっていく。


私達は連れ戻される羽目になる。


旦那は今度は確実に逃げると言った。


多分ヤクザをしているのが苦痛になったのだろう。


お父さんもヤクザだったから、考え方や生き方がまるでヤクザな旦那が、それを苦痛に感じるようになったのは、私のせいだった。


私と知り合わなければ、きっと今でも旦那はヤクザをしていたと思う。



失敗の出来ない、2回目の逃走は成功した。


成功はしたけど、私達は寒空の下、ホームレスのような生活をする羽目になる。


あんなに惨めでひもじくて情けなくていっそ死にたいと思う日々はなかった。


あの男に虐げられてきた日々とは別の意味で地獄だった。


それでも、

生きている。




私達が警察に捕まった時、なぜかホッとした。
これ以上万引きをしなくて済む、

そんな事をぼんやり思う。


捜索願いが出されていた私の家に連絡が入る。


家を出てから
7ヶ月。


私は音信不通だったのだ。



私達を捕まえた警官がとても親切な人で、

色々とよくしてくれた。


電話で泣きながら帰って来なさいと言うお母さんの声に、



涙が出た。



心配かけてごめんなさい。



そう心で呟く。