いつそれが家族のみんなにバレたんだっけ。


私から話したのか、


何かのきっかけで話さざるを得なかったのか、

もう記憶は曖昧。



ただ覚えてるのは、





『結子は嫌がってなんかないと思っていたが』


お前も同罪だと言わんばかりに、


心から反省した様子など微塵も見せない姿に殺意を抱いたこと。



別れてと縋った私に、それは出来ないと言い放ったお母さんに


初めて憎しみを感じたこと。






私は


お母さんに何かを懸命にお願いした事なんかなかった。


お金がないの、小さな頃から分かっていたから、無理なお願いをして困らせたくなくて。


我慢すればいい。


そう思っていつもいつも何も欲しくないフリ。

本当はお母さんにお願い事なんて山ほどあったよ。


だけど私は我慢し続けた。


その私が初めて、あんなに泣きながら取り乱して、


お願いだからこの人と別れてと縋ったのに。




お母さんは頷いてはくれなかった。



あの男を少し責め立てただけ。


昼の仕事に変えてくれたのは、有り難かったけれど。



結局、

生活が大切だから、別れられないのね。



私は高校なんて今すぐ辞めて働くと言ったのに。


せめて高校だけはというお母さんの執念は、


私をとことん苦しめた。



反吐が出る程憎んでる男のお金で高校なんか行きたくない。




だけど。


担任からしつこく説得され、担任の前で号泣したお母さんの涙に、



私は何も言えなかった。



…いいよ。


私はもうこれ以上傷付かない。

これ以上心は死なない。


高校、お母さんの言う通り、卒業するよ。



私を生き地獄に落とした男のお金で、

学校に通えばいいんでしょ。




自分が壊れていく。

そして
壊れた自分はもう元に戻らない気がしていた。