私はカバンからマウスピース(楽器と唇が触れるカップ型の付属品)を取り出し、
マウスピースを唇に軽くあて、
唇を振動させ音を出した。
マウスピースがならないと
楽器もならない。
私はマウスピースで唇を慣らし、
マウスピースを楽器に装着した。
軽く音階を吹き、
メトロノーム(テンポをきざむ機械)をつけ、テンポを60にセットし、
チューナー(音程を合わせるための機械)をつけ
8拍ロングトーンをした。
その後も半音階や分散和音などの基礎練習をした。
基礎練が終わると、
本来はパートのみんなで喋ったり、
曲練をしたりするのだが、
今は基礎練しかできない。
だからひたすら基礎練し続けた。
チャイムがなり、下校を知らせる放送が流れる。
楽器をしまい、
鍵を閉めて職員室に鍵を返しに行った。
「鍵、ありがとうございました。」
と言う私に、山田先生は呑気に
「おつかれさん」
と言った。
―このままでいいんかな……