「あっ!」


朝食を食べ終え、凛と女子寮から校舎に繋がっている長い廊下を歩いていると


急に凛が声を上げ立ち止まった。





『どうかした?』

「ごめんっ、つぼみ。忘れ物したから先行ってて!」

『ん。わかった』



凛は手を合わせてもう一度「ごめん」と言うと、元来た道を慌ただしく戻っていった。





『…やば、遅刻しちゃうっ…』



ふと廊下の窓から見える時計台を見ると、遅刻ギリギリの時刻を差しているのに気付いて、


あたしは慌てて廊下を走った。





そして、角を曲がろうとした―――まさにその時。






「まだつぼみちゃんのことで落ち込んでんのかよー。お前モテるんだからすぐ彼女できるって」


「…別に俺、お前らが思ってるほどモテないから」



友達と話す壱吾の姿が目に入ってきて、あたしはすぐさま壁に身を隠した。




……隠れる必要なんてないのに。




考える前に身体が勝手に動いてそうしてしまっていた。