それはまさしく、愛羅に言っているようなセリフだった。


いつもどこか遠くを見つめる目。その目は、海を見ない。


「私の家、貧乏って言いましたよね?…何もしないより、一生懸命の方がましですから」


海は作業に戻った。


愛羅は、思考を巡らせた。

(何もしないより一生懸命の方がまし…。まさしくお前と俺は逆、だな)


海を見ると、愛羅はすかっとした。自分にはないものを持ちすぎて。それは時に愛羅を苦しめた。

そう今だってーー…。


(ああ…。届かないなあ…)


海は精一杯背伸びをする。あともう少しで届くんだけどな…。
あともう少し…。もう少しで…。