それを、あくびしながらみる愛羅。

はしごを登ったり降りたりする音だけが夜の闇に響く。


飾ったアルファベットの文字が逆なのに、海は気付かない。それほど、周りが見えないのだ。

海がはしごを降り、窓の上に飾るため背伸びをしている時、突然愛羅は口を開いた。


「なんでそんな頑張るの」

独り言のように小さかったが、海の耳には届いていた。


海は振り向き

「わかりません。それって答え、必要ですか」


「…バカみたい」


愛羅は顔を上げた。


「本当…バカだよ」


「バカじゃなきゃ、一生懸命になれません」海の目は、しっかり愛羅を捉えている。「何かに縛られたら、自分じゃないですから」