そこには、今一番会いたくない人が立っていた。


綺麗な顔に、少し戸惑ったような表情を浮かべている。

香奈が明らかに警戒するような目を向けた。



「そう…ですけど」


今度は香奈より先に、私が返事する。

名前を呼ばれたのは私だから。



「一度会ってみたかったんだ。…碧から、いつも話を聞いていたから」


嫌みな感じも、何もなかった。
どことなく丁寧な話し方から育ちの良さが分かる。



「はい…?」

「…隣、いいかな」



香奈はさっと私の隣をどくと、ベランダから部屋の中に戻っていった。

きっと、話を聞きたくないんだろう。



残された私は仕方なく麻美さんと話す羽目になった。