一体どの位時間が立ったんだろう。伊織はまだ俯いたまま何も話さない。変な事言っちゃったかなぁ???って今更考えてもしょうがないか。 
「俺さ…」そう切り出した言葉に私は驚かされた。 「今までそういう事言われた事ないから分からない。だって自分さえ分からないから」
伊織の目がまるで子供の様に淋しくて切ない目になっていた。外された手に温かい余韻が残ったまま伊織は私を横切って、去っていった。自分の恋の障害がこんなに大きくて、手の届かないものだったのかと知らされてしまった。