「えー、と、じゃあ、俺達が最初に歌った歌を」

キャー、だとか、ワー、だとか、黄色い歓声。老若男女関係ない、沢山の声、声。

そこに混じっている自分に、あいつは気づいているだろうか。


重いベース、なのに激しいドラム。速弾きギターに重なる歌。
聞くもの全てを魅了するような、ハイトーンボイス。
初期の頃よりもバンドのメンバーの実力が上がり、ボーカルの声に追いついたのかもしれない。何せこの『最初に歌った歌』―名前は無い―は、もう5年ほど前に作った曲だ。作曲もテクニックも拙い。

だけど、この歌に誰もが惹かれるのはなぜだろう。