…秋が訪れていた。
学校祭を控えて浮ついている校内で、何処か違う世界を見ている孝司。何が映っているんだろう、その、目には。
孝司は時々うちに泊まりに来る。その度にくだらない話をして、どうでもいい雑学を話して、疲れて眠る。
そんな日常を、愛している。無くなってしまう日が怖いとすら感じる。当然のことなのに、寂しいと思う。
「武藤、何処見てんだ?」
「吾妻。いや、何処も」
答えると、吾妻直樹―俺と同じ弓道部に所属している男子だ―が、いきなり手を合わせて拝むように俺を見た。
「なにしてんの」
「あ、いや、ね。俺の友達の伊藤紗枝って分かる?ほら、一番前ね席の」
「…あぁ、あの髪巻いてる奴」
「そうそうそれそれ、なんかそいつがさ、矢島のこと好きなんだってさ。幼馴染なんだろ?取り持ってやってくんない?」
「あいつ…」
いくらあの噂が広がったとは言え、孝司は孝司だ。相も変わらず、綺麗な顔をして、耳のピアスを弄りながら人を食ったような表情を貼り付ける。
当然だ。女子からは黄色い声が上がる程なのだから。
学校祭を控えて浮ついている校内で、何処か違う世界を見ている孝司。何が映っているんだろう、その、目には。
孝司は時々うちに泊まりに来る。その度にくだらない話をして、どうでもいい雑学を話して、疲れて眠る。
そんな日常を、愛している。無くなってしまう日が怖いとすら感じる。当然のことなのに、寂しいと思う。
「武藤、何処見てんだ?」
「吾妻。いや、何処も」
答えると、吾妻直樹―俺と同じ弓道部に所属している男子だ―が、いきなり手を合わせて拝むように俺を見た。
「なにしてんの」
「あ、いや、ね。俺の友達の伊藤紗枝って分かる?ほら、一番前ね席の」
「…あぁ、あの髪巻いてる奴」
「そうそうそれそれ、なんかそいつがさ、矢島のこと好きなんだってさ。幼馴染なんだろ?取り持ってやってくんない?」
「あいつ…」
いくらあの噂が広がったとは言え、孝司は孝司だ。相も変わらず、綺麗な顔をして、耳のピアスを弄りながら人を食ったような表情を貼り付ける。
当然だ。女子からは黄色い声が上がる程なのだから。