「今日バンドの練習なんだ。お前部活終わったら駅前のスタジオ…あー、ほら、カラオケの向かい。そこ来いよ」

「悪い、今日は大会前で練習長引くんだ」

それは本当のことだし、所属している弓道部は、長引くと平気で9時過ぎまで部活をすることもある。団体戦のメンバーに、他の部員を差し置いてなったのだから、練習にはきちんと参加し、成績を修めて来る義務がある。

しかし―それだけなら、多分スタジオに寄ったことだろう。

―孝司が、誰かと一緒に居るところを、どうして見ていられるだろう。女々しい自分に嫌気がさす。妬きもち。嫉妬。どうしようもない、醜い。

幼馴染を、そんな目で見ている自分。罪か、そう言いたければ言えば良い。良くも悪くも、愛情に勝るものは、ない。

マズローの欲求階層説からすれば、原初の本能は生理的欲求だという。…―だけど、それを越える愛の一つや二つ、あっても良いと思う。