孝司は話を続ける。

「で、情死、ってなるとさ、二人で自殺するわけだろ。どっちかが先に死んで、片方が生き残るってことだってある。心中物読んでみるとさ、男が女を殺してそのあと自分も死ぬ、ってのが結構あるわけ。…好きな人を殺すんだ。簡単に情死なんて出来るものじゃない」

苦笑して、孝司はベッドの上をごろごろと転がる。
「あー、なんかめちゃめちゃ久々に悠希の家来たわ。落ち着く」
当然かもしれない。
孝司の母さんのこともあるし、孝司も孝司の父さんも疲れない訳がない。

「酒とかない?」

「残念、俺は善良な男子高生だから」

「ちぇ、つまんね」
孝司は着ていた学ランを畳み、本格的に寝る準備をする。

学ランのポケットから、二枚の紙切れが落ちた。